17 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/21(土) 22:20:27.24 ID:dZUnuoHG0
「なぁ、呪いのキーホルダーってあるのか?」 

ある日、大学で同じ専攻のAが俺に話しかけてきた。 



俺「何?キーホルダー?」 

Aは一言で言うと、嫌なヤツ。 
ガタイが良く、小中高でこんなイジメをしてきた、喧嘩で負けたことがない、 
なんてことを自慢げに話す。頭の悪いヤツだ。 

なんでそんなヤツと繋がりがあるかと言うと、Aは実は情けない程の怖がりで、 
自分に霊感があると信じ込んでいるらしく、ちょっとしたことがあると、 
オカルト好きで変わった趣味を持つ俺に相談しにくるからだ。 
もちろん、何か霊的なことがあったことは一度も無い。 


A「そうだよ、キーホルダー。持っていると、数日後に死んでしまう、 
とかいう呪いがあるらしいんだ。」 

俺「聞いたことないなぁ。まぁ、よくある話じゃないか?」 

A「知らないか・・・。もしかしたら、お前の趣味からして、 
持ってるんじゃないかと思ったんだが。」 

俺の趣味。オカルトグッズ集め。物心ついた頃から始め、 
今では相当な数になっている。



18 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/21(土) 22:21:34.92 ID:dZUnuoHG0
俺「いやいや、第一、もしそんなの持ってたら俺が死ぬだろ?」 

A「あぁ、まぁそりゃそうか・・・。でも聞いたことも無い、か。」 

俺「俺が知る限りじゃないなぁ。何かあったのか?」 

A「実は・・・今、持ってるんだよ。」 

俺「・・・?」 

Aはカバンの中から、変な形のキーホルダーを取り出し、俺に見せてきた。 
菱形の銅版の真ん中に十字架が掘られており、その上にバツ印が描かれている。 
はっきり言って安物の、どこにでもあるキーホルダーだ。 

俺「これが呪いの?何か曰くがあるのか?」 

A「いや、良く分からないんだが・・・。昨日の夜、家でカバンの中見たら、 
コレが入ってたんだ。メモみたいのと一緒に。」と言って、そのメモを俺に見せてくる。

 
19 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/21(土) 22:22:12.00 ID:dZUnuoHG0 
俺「”これは呪いのキーホルダー お前はもう助からない”。 
・・・なんか稚拙な文章だな。誰かのイタズラだろ。」 

A「そうだよな。イタズラだよな。ったく、腹立つわ・・・。それ、やるわ。」 

俺「ん?いらねーよ、こんなの。俺はちゃんとしたモノしかコレクションしないんだ。」 

A「あぁ、そうか。じゃ捨てて帰るわ。まったく・・・」 

ブツブツ言いながら、近くのゴミ箱にキーホルダーを捨て、Aは帰っていった。 


それから2日後、またAが俺のところに来た。何かオドオドしている。 

A「なぁ、この前、捨てたよな?アレ、確かに捨てたよな・・・!?」 

俺「何言ってんだ?」 

A「キーホルダーだよ。ゴミ箱に捨てたはずの! 
あれが、またカバンに入ってたんだよ!」 

そう言って、Aはカバンからキーホルダーを取り出す。確かにあのキーホルダーだ。


 
20 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/21(土) 22:22:50.50 ID:dZUnuoHG0 
俺「ほんとだ・・・」 

Aは確かに捨てていた。俺も見ている。 

A「呪われたのか?もうダメなのか?<俺>、なんとかしてくれよ! 
これ、やるよ!お前持ってろよ!」 

俺「いや、いらないって。落ち着けよ。 
・・・うーん、だけどそれ、もう捨てない方がいいかもな。」 

A「何でだよ?じゃあ死ねってのか?」 

俺「呪いのアイテムってのはな、捨てようとすると逆効果なんだよ。 
捨てれば捨てる程、力が強くなる・・・ってのもよくある。」 

A「はぁ?先に言えよ!?ふざけんなよ!一回捨てちまったじゃねぇか!」 

もう、こいつは本当に・・・。 

俺「あー、じゃあちょっと調べてみるからさ。ちょっと数日待ってくれよ。」 

A「数日?何日だよ!急げよ!」 

騒ぐAを何とかなだめて、俺は早々にその場を退散した。



21 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/21(土) 22:24:03.81 ID:dZUnuoHG0 
その翌日、俺が図書館で調べ物をしていると、Aがやってきた。 
なんだか元気が無い。 

A「<俺>、ちょっと聞いてくれ・・・。もうヤバイかもしれん。」 

俺「ど、どうしたんだよ?」 

A「昨日の夜さ、寝る前にトイレに行こうとしたんだよ。おれ1人暮らしだろ? 
でもさ、普通にトイレのドア開けようとしたら、開かないんだよ。 
誰もいる訳ないのに、何故か、中からカギ掛かってて・・・。 
そしたら、中から声が聞こえたんだよ。しかも1人じゃない、何人かの声が。 
おーい、おーい、おーい・・・って呼んでる声が・・・。」 

Aは思い出したのか、震えていた。 

A「慌てて部屋から飛び出したよ・・・。」 

その後、朝までコンビニやらマンガ喫茶で時間潰して、 
朝になってから部屋に戻ったらしい。



22 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/21(土) 22:24:46.10 ID:dZUnuoHG0 
A「なぁ、なんとかならないか?頼むよ。そうだ。お前、今日うちに泊まりに来いよ。」 

こいつの家には何回か行ったことがあるが、今はちょっと事情が違う。 

俺「いや、今日は無理だわ。うーん、そうだな・・・これ、使ってみろよ。」 

俺は準備してきた護符をAに渡す。 

俺「これ、部屋に張っておけよ。お前のこと守ってくれるハズだから。」 

A「おぉ・・・すまんな!ってかもっと早くによこせよ!」 

Aは護符で安心したのか、勝手なことを言って帰っていった。 


翌日、またAが俺のところに来る。なんだかゲッソリしている。 
どうやら護符は効果がなかったらしい。 

A「夜中、寝ていると、何か気配を感じてさ、ふと目が覚めたんだ。 
そしたらさ・・・部屋に何か居たんだよ。黒い影が部屋の隅に。 
で、また聞こえたんだ。呼ぶ声が。今度は俺の名前呼んでるんだよ。 
○○・・・○○・・・って。」 

Aは頭を抱えている。



23 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/21(土) 22:26:13.96 ID:dZUnuoHG0 
俺「あの護符でダメか・・・」 

俺は少し考えて、これは昨日のより強力なものだ、と言って別の護符を渡した。 
今できることはこれくらいしかない。 
Aはそれを受け取り、フラフラと帰っていった。 


しかし、Aの周りには怪現象が起きつづけた。 
聞こえてくる声は変わった。 
もっと直接的な、死ね・・・死ね・・・死ね・・・という声に変わった。 
携帯の留守番電話にも入っていたり、部屋で寝るのが怖くて、 
公園のベンチなんかで寝ようとしているときにも聞こえてきた、と言っていた。 

Aは1人でブツブツと独り言を言ってることが増えた。 
普段から近づく人は少なかったが、以前以上にAに近づく人は減った。 
気が狂いかけていたか、もしくはもう狂っていたのかもしれない。 
しばらくして、Aは大学に来なくなった。 


そしてそれから数日後、Aが部屋で首を吊って死んでいるのが発見された。



24 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/12/21(土) 22:26:45.81 ID:dZUnuoHG0 
今、俺の手元にはAが持っていたキーホルダーがある。 

安物のキーホルダー。 
俺が買った、ただのキーホルダー。 

Aのおかげで、これは呪いのキーホルダーになった。 
ゴミ箱を漁ったり、合鍵作って部屋に忍び込んだり、録音した声を聞かせたりと、 
色々努力した甲斐があった。Aが単純な男で、本当にやり易かった。 

これで、俺のコレクションがまた1つ増えた訳だ。 
『呪いのキーホルダー』 
ちゃんと曰く付きの、実際に持っていた人が死んでいる、ホンモノだ。